映画「祝(ほうり)の島」「ミツバチの羽音と地球の回転」
2011年 4月 4日 月曜日
BLOGカテゴリー: 映画
映画「祝(ほうり)の島」10年日本 105分 纐纈あや監督
「ミツバチの羽音と地球の回転」10年 135分 鎌仲ひとみ監督
東日本大震災に被災された皆様心よりお見舞い申し上げます。またお亡くなりになられた方々の御冥福お祈りいたします。一日も早い復旧と平穏の回復お祈り申し上げます。
両作品とも山口県瀬戸内海に浮かぶ「祝島」を舞台にしたドキュメンタリーである、この内海の海上交通の発展によってもたらされた経済上、文化上の日本の歴史に果たした役割は大きく、点在する島々の有形無形の遺産は貴重な形で受け継がれている。祝島はその内海の周防灘からの入口に浮かび、千年も前から急峻な山を開拓し続け、恵まれた漁業とともに、島の発展を支え今日の姿となった。山には手間暇かけた琵琶がなり、その不揃い品を食べて育った豚が元気よく飛びまわり、狭い田んぼでは無農薬天日干しの米が作られる、磯に出れば何百年続いた「ひじき」漁が資源を絶やさない伝統を守りながら続けられ、沖に出れば一本釣りで高級魚の鯛が釣れる。都会から見れば理想郷のようなこの島でも若者は都市へ憧れ離島してゆく、しかし4年に一度、島出身者のアイデンテイテイを確認するかのように、各地に散らばった多くの島民が「神舞」(かんまい)の祭には戻って来る、豊漁、豊作を祈り親類縁者の集いは島全体を活気に充ち溢れさせ、往時の栄華を感じさせる。カメラはこの祭りを中心にして、島に残った若者と老人たちの日常を追い続ける。
その祝島に「原発建設」の声が立ち上がったのが1982年の29年前、島の眼前にある上関町田ノ浦がその候補地、前面の海は島にとっては主要な漁業地である。以来人口500人の町が建設反対賛成の攻防を続けてきた。当然、対岸の田ノ浦も同町であることや、安定雇用、補償金、島生活の不便さなどから賛成派も多く、他の7漁協は賛成し、唯一この島の漁協が反対し補償金を返金している。町議会で建設賛成案が可決されても反対運動は行われ、島では28年間毎週、反対派がデモ行進を続けている、それは示威行動というより早朝ウォーキングに近い、オバちゃんたちがその鉢巻の物々しさとは裏腹にペチャペチャ喋りながら島内を歩く、それは皆に訴えるというより絆を確かめる、形骸化を防ぐ行動であり、28年間の結束を支えてきた。中国電力は議会の承認後工事に着手するがこれに対し漁民たちは実力で阻止行動を起こし、陸上ではおばチャンたちが座り込みを、海上では漁船を連ねて工事作業を一時は中断させるが、強行されてしまう。「皆さん第一次産業のみで生きてゆけますか?」「原発を作ることによって確実な雇用が生まれます」中国電力職員の海上での説得の言葉である。この攻防を追い続けた両作品だが、その対象とする人物や時間的ずれはあるが同じ視点で見ており、双方の映像にそれぞれが写ってしまうのではと心配させる程似た映像であった。「祝の島」は昨年「ミツバチ」は今年公開された。
「ミツバチ」は以上の映像に加え原発の脅威を強く訴えている。電力事情取材のためスウェーデンを訪れ、「日本ではまだ原発建設の計画があるのか」と驚かれ、地域自立型のエネルギー供給事情を見学し、ほぼ独占状態の日本の電力事情を見直す必要を訴えている。 今回の震災発生直後山口県知事は中国電力に対し「上関原発」の見直しを要請した、29年に及ぶ反対運動には全く姿勢を崩さなかった当局の今回の即断である、結論は出ていないが気が付くには余りにも大きい代償である。「ミツバチ」は現時点で日本全国で公開の予定であったが、「都合により当分上映中止します」の貼り紙があり、上映されていない。