芭蕉堂店主ブログ 雖小居日録

映画「ありあまるごちそう」

2011年 4月 27日 水曜日
BLOGカテゴリー: 映画

映画「ありあまるごちそう」We Feed The World 05オーストリア 96分
   エルヴィン・ヴァーゲン・オファー監督・脚本・撮影
丸い形や長細いのや茶色や黒や、様々な種類のパンがベルトコンベアーで運ばれてくる、半端な量ではなく、やがてパンは積み上げられた一角に落とされる、シャベルカーがそれをダンプに積み込む。多くの日本人観光客が訪れるウイーンでの光景であり、テロップが流れ「この首都では毎年2千トンのパンが捨てられる、それはオーストリア第2の都市グラーツの年間消費量に匹敵する」「この地球上で毎日飢えた子どもたちが10万人死んでゆき、8億人が飢えに瀕し、地球全体の食糧生産量は120億人を養うことが出来る」スト-ブに「コーン」がくべられ赤々と燃え、食物燃料がエネルギーとして重要な立場となったことを象徴し、タイトルが現れる。6年前の製作であるが現状は地球の将来にとって好転しているとは思えず、この映像に出てくる現象は様々な場面で一層顕著となっており、「余る」状況は質的にはともかく量的には増えており、一方で「飢える」その政治状況は益々泥沼状態に陥っている。全編食物に関するショッキンングな映像が続く、スペインのどこだろうか、空撮のビニールハウスが続く、延々と丘陵地に白い畑が続きその内部にカメラが移動し、トマト栽培とわかる、ヨ-ロッパ向けで大規模生産により従来のアフリカ産より低価格にしたことで西アフリカのトマトは瀕死の状態となり、従業員はスペインへの出稼ぎとなった。大型トラックがEU各地へ新鮮なトマトを運んでゆく。話題は大豆へ、ブラジルの奥地へ向かう、森林を開墾し大豆が栽培される、森林伐採はCO2増加原因として大変問題となっており、「豆腐」大好き国として心痛むが、その殆どは、欧米へ家畜飼料として輸出されている。オーストリアの養鶏工場へと場面は移る。「チキン」が食卓に上るまでの工程の映像である。孵化可能な有精卵を産む親鳥を大量に提供出来る工場は世界に少なく、オス1羽メス10羽の割合で卵を孵化しその「ひよこ」が養鶏業者に売られ、飼育される、その飼料がブラジル産の大豆である、卵専用のブロイラーがカプセルホテルなら「大広間」の雑魚寝だろうか、薄暗い中動きの自由はあるが餌と水の往復である、生育すると掃除機で吸引されるようにラインに乗せられ一気に「製品」となってゆく、足を固定され、宙ずりのまま電気ショック、頸部を切断され血抜き、強力吸引装置で羽がむしられ丸裸に、優秀な最先端解体装置が細部まで入り込み、内蔵削除、部位毎の切断となり、部位は纏められ心臓は日本のヤキトリか、足は香港の屋台なのだろうか。普通の製造工場では工程を経るに従い製品の状態が明らかになるが、全く逆で見慣れた鶏が見る見る変貌して、クリスマスのローストチキンとなってパックされる。オーストリアが食糧生産経営の中心主要国であるらしく、世界一の食品会社「ネスレ」のCEOはオーストリア人である。そのインタビューで「従業員27万5千人その関連会社や家族を含めると450万人の生活がかかっており、あらゆる食料を日々増産してゆかなければならない」映像には出てこないが、人ごとではない、チラシには日本の食糧廃棄量、業社と家庭合わせて年間2200万トン(2005年)途上国の1億人分の年間食糧である。


 

 

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