映画「リリア-4- ever」
2011年 5月 9日 月曜日
BLOGカテゴリー: 映画
映画「リリア4-ever」02スウェーデン 105分 ロシア語(英語、スウェーデン語)
監督 ルーカス・ムーデイソン
出演 オクサナ・アキンシア、アルチオン・ボグチャノスキー、エリーナ・ベニンソン
日本では未公開であり、北欧映画祭にて上映された。DVD化もされておらず、運が良ければ、YU –TUBUで英語字幕で鑑賞出来るかもしれない。監督ムーデイソンは過去作品「ショー・ミー・ラブ」「エヴァとステファンと素敵な家族」で脚光を浴び今回の作品となった。スウエーデン映画といえばベルイマンが有名でその記憶しかないが、監督は孫世代にあたり月日の速さに驚かされる。
ケン・ローチは「Sweet Sixteen」(英02)でイギリスの疲弊した街で十代の若者の行き場のない叫びを悪の世界に身を置くことで解消しようとし、結果は自分を「捨てる」ことであった。しかしそこには悪に引き込む頼れるアニキもいたし、仲間もいた。チャン・ツオーチは 「美麗時光」台湾01では主人公の危うい青春時代が黒社会に繋がり泥沼にのめり込んでゆく、そこには否定的だが家族も友人も居た。最近の韓国映画「息もできない」では家族からも仲間からも離れ行き場のなくなった若い男女が束の間ではあるが同じ時を共有出来た。
「リリア」はその全てから見放された少女の話である。舞台はロシアの大きな国営工場が閉鎖になった一地方の町である。体制の崩壊により街の一角は世界から見放されたような現状で明日の食糧にも事欠く中、大人も子供も必死に今日を生きている。冒頭まず母親に捨てられる、父親は生まれたときには既に出奔しており顔も知らない、母親と愛人は米国行きを計画し娘も一緒の話にウキウキしていたがその場になって二人だけで行ってしまう。頼りな筈の叔母は劣悪な自分の住居と無理矢理交換させ、廃墟のような部屋に住むことになる、学校は双方が歩み寄る空間とは既になっていなく、親友達にも裏切られ、誤解から段々離れていってしまい逆に迫害に遭う。そんな中唯一の心の拠り所が近くの同じような環境の年下の男の子のヴォロージャ、彼の淡い恋心とは無縁に母心のような接し方で弟のように庇い、養い、寂しさを解消している。そして当然の帰結のように体を売ることで生活を支えるようになり、そこに親切な男が現れる、言葉巧みに西欧社会の素晴らしさを伝える、そしてリリアは眼を輝かせて未来の夢を思い描く、一貫してリリアはどんな境遇に成っても上昇志向を持ち続け生きて行き、挫けることを知らない、それは最後の最後まで変わらない、ヴォロ-ジャと幸せな空間を共有出来るのだがあまりに悲しい、天空空高く「とんび」だろうか、二人を旋回しながら見下ろしている。そして二人がいつも過ごした木製ベンチには「Lilja-4- ever」と刻まれていた。全編「t.A.T.u.」やラムシュタインの曲が流れ力強い映像を作っている。