芭蕉堂店主ブログ 雖小居日録

映画「トゥルーグリット」

2011年 7月 15日 金曜日
BLOGカテゴリー: 映画

映画「トゥルーグリット」True Grit 2010米国110分                       監督 ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン 原作 チャールズ・ポーテイス                     ジェフ・ブリッジス、マット・ディモン、ジョシュ・ブローリン

気丈で聡明、口から発せられる言葉は14歳の少女らしからぬ敵格さとウィットに富み、おじさんやエリ-トを困惑させ、商売の駆け引きにまで打ち勝ち、荒くれ男の世界に飛び込み、タフな精神力で「父の敵撃ち」の目的を達成したマテイーを、見事演じているのだが、この映画の主人公は、そのジョシュ・ブローリンではない。「クレージー・ハート」では腹の突き出たアル中ミュージシャンを見事に演じ、「どうしたら娘のような女性から愛されるになるか」を中年男に示し喝采をあびたが、今回酒量は倍になり、騎乗もままならない中年保安官を演じ、ギターをピストルに変え、新宿署の、ヤクザと区別のつかない刑事のように、殆ど極悪人のような立ち居振る舞いだが、長年の経験則は現場で見事発揮され確実に悪い奴は殺す、だがそのジェフも主人公にはなれない。日本では桜田門のSPに例えればよいのか、どこの大きな組織にもこの手はいるのだが、警察畑のエリート、テキサスレンジャーで、高所から判断を下す様は権力と地位と能力を併せ持ち、自分中心に世界は動いていると信じ、その高慢な役をマット・ディモン、ピッタリはまり役で上手に演じているが、主役ではない。                                             この映画の主人公は、この地フォートマスを中心とした「西部」の地である。米国は広い、その中で開拓時代、温暖風光明美の土地ばかりであった筈もなく、気候の面でも灼熱の砂漠もあれば、寒冷の山間もあった訳で、その地域差、季節感の出ている西部劇となった。遥か昔、見た映像の刺激は強く、裸で出てくるインデイアンばかり印象に残っているが、南の地ばかりが開拓の対称となった訳ではないのだ。この映画のオフィシャルサイトは大変充実していて(http://www.truegritmovie.com/intl/jp/)、その細字に苦労するが興味深く当時の事情を説明している。引用すると、時は1879年当時38州であったがそのオクラホマ州フォートマスが舞台であり、文明化を西に向けて進めていたが、この地は当時最西端にあり、さらにその西は「無法」「無神」であり原住民領であった、そして後には都市の奥深い一角が例えば「カスバ」や「九龍城」がその役を担ったが、当時では、この地に犯罪者やならず者が逃げ込み、追手から逃れる場所となった。当然その者たちを追う「レンジャー」「保安官」「賞金稼ぎ」の溜まり場ともなった。様々な近代文明が西を目指し、それは機関車や、武器、ガラス窓、経済活動であったりするが、法整備が追いつかない、その土地それぞれで見合う法律が作られるが、それは白人中心であり、原住民や移民者には差別されたもので、縛り首の原住民には弁明の機会も与えられず、保安官も中国人の子供を何の躊躇いもなく殴り飛ばす、現在の米国社会に通ずることで、強い者が社会を引っぱてゆくのだという主張と、その歪みを正そうとするキリスト教(原作には度々当時のキリスト教関連の組織の話が出てくる)を背景にした、そんなに単純なものではないだろうが、強烈な民主主義とのせめぎ合いが、以降の米国社会の歴史となるのだろうか?


 

 

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