芭蕉堂店主ブログ 雖小居日録

映画「密告者とその家族」

2011年 11月 16日 水曜日
BLOGカテゴリー: 映画

映画「密告者とその家族」The Collaborator and His Family
1911年  米イスラエル仏84分
監督 ルーシー・シャツ アデイ・バラシュ  ドキュメンタリー

山形ドキュメンタリー映画祭今年度グランプリ受賞作品である。監督夫妻訪日の予定であったが、家庭事情により来日出来ず、残念なことである。
作品は中東パレスチナ自治区においてイスラエルへの情報を流すいわゆる「密告」していたことがパレスチナ自治区側に発覚しイスラエルへ逃げて来た家族の話である。「密告者」として発覚すると国や仲間から家族を含めて即刻収監や殺害されてしまうことになる、仲間への裏切りは決して許さない法治を超える長い間の民族の掟である。主人公の父親はやっとの思いで脱出し、家族も後に合流する。しかしイスラエルでは受け入れることはするが、その家族に滞在許可証を発行しない、パレスチナを去った「情報提供者」はお払い箱なのである、妻と男の子3人幼い娘が2人、粗末な部屋で何とか生活している。不法滞在者に対する、子供たちの学業の問題や、生活関連の行政の対応はどのようになっているのか不明部分は多いが、何の保証もない生活は過酷である、収入は家賃取り立て代行のような仕事で得ているらしい、子供たちが学校に通いだしても、楽しく集える場所とは程遠く、昼間街を徘徊するようになるとそこにはイスラエル警察の尋問や新たな「密告者」への誘いの罠が待ち受けている。夫婦仲もそんな過酷な生活の中、歪みも生まれ、DV嫌疑で夫の方は妻及び家族と同居することを禁止され、もっと酷い部屋での生活を強いられる、只この決定がどの当局の判断でなされたのか疑問は残る、不法滞在者としての存在でも夫婦仲の問題を取り扱えるのだろうか?誰がどこに訴えたのだろう?しかしそんな生活が子供たちを含め続いていても、父親を中心とする家族の絆は、その厳しい環境がより強くさせるのか、結局家族しか拠り所がないからか、強い力で結ばれている、父親の誕生日には大きなケーキで皆が祝い、現状を忘れさせる程の素晴らしい笑顔でお祝いする。そこには世界共通の子供たちの純粋な瞳の輝きを見ることが出来る。故郷に帰りたいが、そこには死か監獄しかない、異国での根なし草の生活はどこまで続くのか、自国喪失を受け要らざるを得ない中、その生活している異国への恨みもまた次世代へと繋がってゆく。               イスラエルの建国60年位になるが、その新しい国を守る力、それを脅かす存在への強い抵抗は人道を超えることが多い、特にパレスナ自治区への攻撃は治まることを知らない、四方敵に囲まれる中、手段を選ばず行われる、この「密告制度」も国際法上許される筈なく、最近では国連への加盟承認に対しても様々な合法的報復を声明しているし、ユネスコ加盟に関しても同様である、頼りは全世界各地での力を確保しているユダヤ人であり、その中心は米国でありイスラエルに何事も同調している。遥か極東の地でそのことにコメントするのは難しい問題だが、ユダヤ人が受けた紀元後の迫害の歴史、第2次大戦でのホロコーストで有史最大の悲劇を経験し、その受けた民族的な痛みは過剰防衛の自己保身となる。長男が語る「腕に鉄十字章の刺青をして、ユダヤ人に誇示したい」様々な脅しや誘惑の中、父親の道をまた歩むのか、逆の自爆の道に進むのか悲劇は終わりそうにない。


 

 

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