芭蕉堂店主ブログ 雖小居日録

映画「占い師」

2012年 6月 21日 木曜日
BLOGカテゴリー: 映画

映画「占い師」算命 Fortune Teller 2019 中国 129分

監督 徐童 ドキュメンタリー

出演 厲百程 石真珠 唐小雁

 前作の「収穫」で徐監督は、地方の農家の娘が、父の肝臓病の入院費を稼ぐために近隣の都会の散髪屋に出稼ぎに出るが、実は風俗業であり、その様子をカメラは真正面から捉え、克明に描写した。上映後のQ&Aで「彼女たちの顔が鮮明に撮られていて問題ないのか?」の質問に「中国で公開されることはなく、また中国は広いので彼女たちの知り合いがこの映画を見ることは殆どあり得ない」との答えに驚いたのを覚えている。

 同監督第2作品である。足に不自由のある占い師、厲百程と脳に障害を持つ妻、石真珠の夫婦の話である。章回体小説の形態をとっていて、各章毎その内容の概要をタイトルで示して始まる、例えば「春節、夫婦故郷に戻る」など丁寧な事に日本語であり、随所に登場し表示される。何故か「野菊の如き君なりき」のモノクロ映像が甦る。

 場所は北京の近郊であろうか、そこで占い業を営む夫、個性強く主張は客を圧倒するのか、占いもよく当たるらしく、近所の同様な境遇の庶民(中国語では「遊民」)がやってくる、唐小雁もそんな一人で迷っては占いを、よく見てもらいに来る、そして運命鑑定というよりは、人生のアドバイスとも思える忠告を聞いて自分の糧としている。彼女は実はマッサージ店と称して風俗業のママで、何人か女の子をかかえて商売をしている、そんな彼女へカメラの焦点は移動して行く、男に一歩も引けを取らない中国女の力強さを発揮し、問題を起こしたのは内縁の夫だったのか、常連の客なのだろうか、凄い勢いで暴力も辞さない奮闘ぶりで、なじり、こづき、男は退散してゆく。その周辺には、気の置けない人々ばかりで不自由な生活の二人に優しい声を掛ける、そして夫も健常生活の出来ない妻に対し献身的に面倒を見ており、本来の介護や扶助の在り方を考えさせられる。制度や金銭を介在とした介護方法はどんなに豪華で親切であれ限界があり、人間同士の本来の関係が介在する事とは程遠く、返って弱者同士の関係の方が心も血も伝わる気がし、夫の人生に対する確固とした自信も滲み出てきて、この夫婦の関係の素晴らしさを実感させられる。春節に妻の実家に戻るシーンがある、兄夫婦が住んでいて妻はそこで虐待を受け益々精神を悪くした、その動物の檻のような小屋を「ここで妻は暮らしていた」と言って示す。そこに兄夫婦への恨みは存在しないし、親族での平穏な食事風景の映像が続く、故郷での仲の良かった路上生活者と会って昔を懐かしみ寒さも共有する、過去へのこだわりとか、未来への不安を微塵も感じさせずに、現在の「時」が刻々と確実に表現されてゆき、そこを徐監督は普通の目線で捉えてゆく、時には若い女性との金の交渉場面も入り、そこでは監督との少々倹悪な会話もシーンも織り込まれ監督自身も画面上に介在せざるを得なくなる。そしてラストには唐ママは売春容疑で捕まり留置場へ、そして「その後は行方不明」とのテロップ、ところが各国の映画祭の上映には監督に付き添う形で登場し、監督以上に質問が寄せられ、逞しく、しかも可愛く受け応えし、喝采を浴びている。


 

 

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