彫りゴム印の製造方法
彫刻ゴム印の製造工程はいたって簡単である。それは木版画や芋版版画などと同様で下書きしてそれを彫ることで凸型にすれば完成する。しかしながらその彫刻ゴム印は使用者の要求を満たすためにはその簡単な各工程で高度な技術が要求される。
その彫刻ゴム印の製造工程を示すと・・・
【1】版下作製 薄い半透明の紙(多くは雁皮紙と呼ばれる紙を使用)に毛筆で作製する字を書く、達筆さに加え、使用場所によってそのスペースに何文字入れるかとか、大きさの違う文字をバランスよく入れるかなど割り付けの高度技術とセンスを要求され、その良し悪しが製品の質に影響してくる。
【2】その版下をゴム板に逆字に転写する、ゴム面がツルツルでもざらつきすぎても駄目で慎重な作業となる。紙に水分を含ませ、墨が溶けてゴムの方に転写するよう微妙な圧力をかけ、紙部分に墨が残らない位まで転写する。現在はカーボン系コピーを特殊インクで溶かして転写する方法が取られており、より簡単になっている。
【3】転写された文字の縁に沿って「切り回し刀」と呼ばれる印刀で切り込みを入れてゆく(写真:彫りゴム切り回し)
垂直に刀を入れると完成時、特に細い部分は安定が悪くなり、印面を横から垂直に見る形で台形に成るよう彫る。輪郭全てに切り込みを入れたら、捺印時に不要な部分を削り取ってゆく(写真:彫りゴム浚い)。「さらい刀」と呼ばれる印刃で底を削ぎとれるよう刃が付いており、削り取ったゴムを引っ張りながらさらってゆく。
この時ゴムを引っ張ってゆく道具として創始者は針(畳針のような形)を使用し(写真:彫りゴム浚い2針使用)、その後使用方法が難しいためピンセットが普及するが、当店での技術習得者は針を使用している。全て下まで抜いてしまえば簡単だが文字がバラバラになってしまい使用しづらい。
従ってゴムの厚さの3分の2位の部分を取り除いて出来あがる。(写真:彫りゴム完成)
【4】押し易いよう台木につけて完成する。